イギリス英語よりアメリカ英語の方が古い理由って?
こんにちはキング・ブログ・スライムです。
今回は、「イギリス英語よりも、アメリカ英語の方が実は古い」こと、そしてそこから発展して、「移民の言語全般に言えること」、そしてそこから更に突っ込んで「その理由」について書いていこうと思います。
イギリス英語と、アメリカ英語のどちらが古いか?と問われても、いまいちピンときませんね。
例をあげて考えてみましょう。
今回はこんな内容
アメリカ英語とイギリス英語を比べる
ご存知の通り、現在のアメリカ合衆国は17世紀以降、イギリスからの移民が流入したことにより成立しました。
世界史では初めてアメリカ大陸に到着したイギリス人の一行を「ピルグリムファーザーズ」と呼びました。
懐かしいですね(笑)
ピルグリムファーザーズ一行が、誓約書にサインしているシーン
当然ながら、当時はイギリス本国もアメリカ植民地も同じイギリス人が住んでいるので、使っている英語も同じだったはずです。
イギリス英語とアメリカ英語が今のように違ってくるのは、アメリカ植民が始まって以降だと言われています。
当然といえば当然ですね。
さて、一般的に考えると、元々あったイギリス英語のほうが古く、後からできたアメリカ英語のほうが新しい、はずです。
しかし、言語学的にはそうではありません。
多くの言語学者が一致するには、アメリカ英語の方が古いということです。
単語・文法・発音の順にみていきましょう。
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①単語
例えば「秋」を英語で表現したい場合、米英で用いる単語が違います。
アメリカ英語では、一般に「fall」、イギリス英語では「autumn」といいます。
このアメリカで現在も使われる「fall」という言葉ですが、昔はイギリスでも使われていましたが、廃れて使われなくなったそうです。
そのかわりにフランス語から「autumn」という語を輸入しました。
他にもいくつか「アメリカ英語では残っているが、イギリスでは古くなって廃れた単語」を紹介しておきましょう。
アメリカ英語 | イギリス英語 |
fall | autumn |
trash | rubbish |
gotten | got |
trashやrubbishはどちらも「ゴミ」という意味ですが、rubbishのほうが新しいです。
また、私たちは「get」の現在形・過去形・過去分詞形をそれぞれ「get got gotten」と習いましたが、それはアメリカ英語の活用です。
イギリス英語では「get got got」で、より簡潔な表現になっていますね。
②文法
例えば、「仮定法現在」です。
仮定法現在という表現は、少し聞きなれないかもしれませんが、高校で皆が習ったはずの「命令・要求の動詞に続くthat節の中には、動詞の原型を使う」というお決まりの文法のことです。
例えば
「I insisted that he apologize for being late.」(私は遅れた彼に謝れと強くいった。)
「apologize」の部分には、動詞の原型が使われるというヤツです。
そして学校では、、「I insisted that he (should) apologize for being late.」
「should」を付けてもいいと習いました。
さて、イギリス英語とアメリカ英語では、この用法に違いがあります。
イギリス英語では後者、つまり「should」を付けてもいい方で、一方のアメリカ英語は動詞の原型を維持する方です。
イギリス英語:「I insisted that he (should) apologize for being late.」
アメリカ英語:「I insisted that he apologize for being late.」
実は本来、この用法では「should」を使わなかったのです。
イギリス人が後から、「should」をつけるようになったのです。
「should」がつくようになった理由には諸説ありますが、一つの理由としては、三人称が主語であるのに動詞が原形のままであるのは落ち着かず、そこで当時のイギリス人は、助動詞の「should」を挟み込んで、その”気持ち悪さ”を解消したと言われています。
例えば、ほとんどの日本人は現在では、「走られる」とは言わず、「走れる」と言いますね。
「ら」を抜くことで、”しっくりこない感じ””気持ち悪さ”を解消しているのです。イギリス人が「should」を付けるのも、それと似た感覚だと考えて下さい。
つまり、動詞の原型をそのまま使うアメリカ英語の方が古く、「should」を付けるようになったイギリス英語の方が新しいといえます。
③発音
中学校で習う単純な単語を上げてみましょう。
例えば「car」でいきましょう。
アメリカ英語では「カーr」と発音します。
上手く表現できませんが、最後の「r」の音は下を引っ込めて巻き舌に近い状態で発音します。
一方、イギリス英語では「カー」と日本語の「かー」に近い発音をします。
少しアメリカ英語とイギリス英語に興味がある人なら、「car」などの「r」の発音の差は有名なので、知っている人も多いかもしれませんね。
で、上で見たピルグリムファーザーズの一行が植民した時の英語の発音は、現在のアメリカ英語の発音に近いと言われています。
つまり、17世紀ごろの発音に近いのは、イギリス英語よりもむしろアメリカ英語なのです。
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日本と日系ブラジル移民の比較
高度経済成長を経験するまで、日本社会は非常に貧しく、新たなチャンスを求めて海外に移民した人も大勢いました。
そのうちの一部が南米に渡って定住し、日系南米移民や日系ブラジル移民と呼ばれるようになりました。
20世紀始めから第二次世界大戦終戦直後にかけて、ブラジルに移民し、一部は成功してブラジル社会の中枢を握っています。
日系ブラジルの多くは挨拶の時に、「ごきげんよう」というそうです
日本ではあまり言いません。「こんにちは」や「さようなら」が一般的です。
現代でも、伝統を重んじる学校で育った人や年内の方には、「ごきげんよう」を使う人がいますが、現代では廃れてしまった表現です。
因みに、私が「ごきげんよう」という言葉を初めて耳にしたのは、「ライオンのごきげんよう」という番組のタイトルでした笑
それほど現在の日本では使われなくなったのです。
フランス語とカナダのケベック州
世界史を勉強した人ならご存知でしょうが、カナダは元イギリスの植民地であり、その前にはフランスの植民地でした。
そして今では、カナダは英語の国として成立していますが、以前にフランス領であったこともあり、フランス語を話す人々が多くいました。
フランス人が特に多いのがケベック州(Quebec)です。
「カナディアン・フレンチ」などと呼ばれたりします。
私自身がフランス語にそれほど詳しくないので、フランス語が専門である教授に軽く聞いてみました。
「ケベックの方が、文法や単語の面でいろいろ古いところがあるよ」
とおっしゃっていました。
時間の都合で詳しく聞けませんでしたが、次に詳しく聞いて追記してみます。
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一般に言えること
勿論、アメリカ英語の例にしろ、ブラジル移民の日本語の例にしろ、カナディアンフレンチにしろ、例外はあります。それぞれ独自に進化しているので、単純にどちらが古いと一概には言えません。
しかし一般に、言語学には
ある国語が遠隔地に移植されると、その当時の語彙、発音、語法などが温存される傾向がある。それに比べて、本家で話されている母語の変化は速い
という一般法則が共有されています。
その理由
さて、「本国よりも、移民先の言葉の方が古くなってしまう」具体的な例について一緒に見てきました。
そろそろ、その理由が知りたいですよね。
他のサイトでは、どうして移民先の言語の方が古くなるのか理由が載っていません。
なので今回の記事では、考えられる理由を私の推測の範囲で述べてみます。
確実な証拠はないので、事実かどうかは保証できません。あくまで推測です。
私の中では割と自信がありますが、、
①移民の方が古い文化・言語を大切にする
②話者数が少ない場合、言葉の変化は少ない
下では、それぞれの理由について解説していきます。
①移民の方が古い文化・言語を大切にする
文化や言語は自分たちの起源であり、アイデンティティの根拠とされています。
私たちが自分のことを日本人だと思っているのは、日本食に馴染み、日本語を話し、日本風の家に住み、、、というように和の文化や日本語を受け入れているからですよね。
しかし、普段私たちは自分のアイデンティティ(=「私は日本人である」)について意識することはほとんどありません。日本のものに囲まれて生活しているので、それが当たり前。
日本人であって当たり前なわけです。
一方で、移民の場合は違います。
移民は周囲を異文化に囲まれており、そこでは、肌の色・考え方・身分の違いなど、自分と周囲との差や壁を感じざるを得ません。
「周りは自分とは違う、じゃあ自分とは何なのか?」
のように、周囲との違いから、これまでまったく気にしなかった「自分とは何か」という問いが生まれてくると思われます。
「自分とは何か」という問いに答えられるのが、自身の言葉や文化です。
その結果、移民の人々は、本土の人よりも本土の文化・言語を大切にして、維持しようとすると考えられます。
例えば、皆さんがを含めて数十人の日本人が突然、アフリカのど真ん中に連れて行かれたとします。先住民の人々に発見され、一緒に暮らすことになりました。
周りは黒人で、体格も違うし、食べ物も違うし、住居も違うし、考え方も根本から違います。全てが違うわけです。
確かに打ち解けようと、異文化を受け入れよとう、ある程度の努力はするかもしれません。
しかし、心の底から受け入れることは難しいでしょう。日本人なのですから。
その時に、「自分は日本人だ」「自分は自分だ」と示すことのできる根拠は、日本の言葉や文化しかないでしょう。
日本にいた時以上に、自国の言葉や文化を懐かしく思い、大切に感じるのではないでしょうか。
だから、子供ができても、子供には現地語だけでなく、日本語や日本の文化について教えると思います。そうやって伝承されていくわけです。
遠く本国を離れてアメリカ大陸で暮らした当時のイギリス人や、日系ブラジル人が本国を想う心を想像してみて下さい。
二度と戻ることは出来ない遠い故郷を懐かしみ、本国の文化を大切にしていたのではないでしょうか。
例が長くなりましたが、移民が本土の人より本土の文化・言葉を大切にして維持しようとするのは、そのためです。
そのため、移民先の言語は、本国のそれよりも変化が少なく、結果的に古くなってしまうのだろうと思います。
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②話者数が少ない場合、言葉の変化は少ない
これが当てはまるのは、特にブラジル移民や、カナダのフランス語の場合です。話者が少ないということは、その分言葉を変化させる人間も少ないということ。
例えば、仮に日本の人口が今の10分の1であったとします。
2チャンネルの掲示板も10分の1になりますよね。
そうすると、ネット人口が少なくなり、掲示板の数も少なくなり、新たに使われる言葉も少なくなるわけです。
そんな世界では、「ワロタ」や「コま?」のようなネットスラングも生まれていないかもしれませんね(笑)。
このように、言語の変化は話者数に依存することが多いと考えられます。
アメリカは、2には当てはまりませんので、1のみです。
ブラジル移民は、1と2どちらも当てはまりますね。
それゆえ日系ブラジル人の日本語では、本国よりもなおさら、言語の変化が少なくなります。
最後に
言語は、元々生まれた場所の言葉の方が古いのだと思ってしまいがちです。
しかし、一般的な推測とは異なり、言語は移民先の方で長期間保存されるため、移民先の言葉の方が古くなってしまいます。
アメリカ移民やブラジル移民の場合だけでなく、他の移民にも当てはまることが多いです。
なんとも不思議ですね。
最後に参考記事を挙げておきます。イギリス・ヨーロッパ好きのあなたに!
①イギリスがEUを離脱した理由を図を交えて分かりやすく説明しました。
②マズイと有名なイギリス料理を作ってみた。
ではでは、、、
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