≪図解≫EUとはどんな組織? 基礎から分かりやすく説明します
EUとはどんな組織なのかゼロから解説していきます
こんにちは。キング・ブログ・スライムです。
最近、イギリスが脱退することで有名になっているEU。
しかし、イギリスのEU離脱問題(ブレグジット)を考える前に、「そもそもEUってどんな組織?」と疑問を持つ方も多いと思います。
今回は…
「EUとはどんな組織なのか?」
「どんなことをやっているの?」
「加盟国になるとどんなメリット・デメリットがあるの?」
といったEUの基礎について、ゼロから簡単にわかりやすく説明しようと思います。
記事の内容を要約!
・EUとはザックリいうと、ヨーロッパを一つの国にまとめた組織のようなもの
・EUの主要国(リーダー)は、①ドイツ ②フランス ③イギリス(2019年に離脱予定)
・もともとEUは、資源や覇権が原因で起こった不毛な戦争(第一、二次世界大戦)を繰り返さないために作られた
・EUの特徴は、①人の移動が自由 ②モノやおカネの移動が自由 ③同じ通貨のユーロを使っている、の3つ
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今回はこんな内容
EUとはどんな組織?
EUのシンボルである欧州旗で、12個の金色の星が集まって出来ています
EUは「European Union」を省略したもので、日本語では欧州連合と訳されます。
詳しくはあとで説明しますが、EUの最終的な目的は、ヨーロッパ全体を経済だけでなく社会システムや法律、政治レベルでひとつにまとまることです。
超ザックリいってしまえば、ヨーロッパを1つの国のような組織にまとめてしまおうということ。
上の写真が、2018年11月現在のEU加盟国の地図(青色で塗られた部分)です。
加盟国は合計で28カ国。
- ベルギー
- ブルガリア
- チェコ
- デンマーク
- ドイツ(加盟時西ドイツ)
- エストニア
- アイルランド
- ギリシャ
- スペイン
- フランス
- クロアチア
- イタリア
- キプロス
- ラトビア
- リトアニア
- ルクセンブルク
- ハンガリー
- マルタ
- オランダ
- オーストリア
- ポーランド
- ポルトガル
- ルーマニア
- スロベニア
- スロバキア
- フィンランド
- スウェーデン
- 英国
(引用元サイト:EU加盟国と地図―外務省)
EUの主役たち(主要構成国)
EU加盟国は全部で28カ国です。
そのなかでも大きな権限・経済力を持つ主要国は、ドイツやフランス、イギリスの3国です。
それぞれに自己紹介をしてもらいましょう。
<ドイツ>
「グーテンターク~」(こんにちはの意味)
EU最大の経済大国であり、EUのボス的存在として君臨しています。
ただし、ナチスドイツの反省から、ボスでありながら謙虚であるという稀にみる逸材を演じています(強硬姿勢に出ると、各国から「ナチス時代の再来だ!」と指摘される可能性があります)。
ヨーロッパで最も工業が発達していて、沢山の自動車や機械の輸出をすることで大きな利益を上げています。
<フランス>
「ボンジュール~」(こんにちはの意味)
ドイツに次ぐ、EUのナンバー2。
ドイツほどの工業力・経済力はありませんが、観光業が強く(凱旋門、エッフェル塔など有名な建築物が沢山ありますね)、じつは農業も得意としています。
<イギリス>
「ハロ~」(これはわかりますね)
2016年6月の国民投票で、EU離脱の方針が決まったイギリス。
昔ほどのパワーはありませんが、今でもヨーロッパの大国の一員です。
なお、2017年9月現在ではまだ正式には離脱しておらず、離脱交渉中です。正式離脱は2019年の春までに行われる予定です。
何かとお騒がせしていますが、お許しください。※私が言ってどうする
なぜEUができたの?
次にEUの歴史についてお話します。
EUの原型ができたのは、第二次世界大戦直後のヨーロッパにさかのぼります。当時のヨーロッパは、ヒトラー率いるナチスドイツと、アメリカ・イギリス・ソ連を中心とする連合国が激戦に次ぐ激戦を繰り広げていました。
戦場となったヨーロッパでは、国土は荒廃し、多数の犠牲者を出す結果に終わりました。
第二次世界大戦の20年前に第一次世界大戦を経験していることも踏まえると、ヨーロッパは2回の世界大戦を、たった30年のうちに経験したことになります。
理由① 人々が「平和」を望んでいた
そのような度重なる不毛な戦争に疲れ果てた当時の人々は、心の底から「平和」を求めていました。
「二度と戦争を起こしてはいけない」そんな思いが、敗戦国のドイツだけでなく、戦勝国を含めたヨーロッパ各地で共有されていたのです。
そこで出てきたのが、常に戦争の原因となってきた石炭と鉄鉱石を、ヨーロッパの国々が共同で管理しようという考え方でした。
鉄は自動車や鉄道、ビルの骨組みなど日常生活に欠かせないものをつくるのに必要ですし、石炭は機関車を動かし、鉄を精錬するのに必要です。
石炭と鉄鉱石、どちらも社会を維持していくために不可欠な資源ですが、産出場所が限られているため、取り合い、つまり戦争になったのです。
石炭と鉄鉱石を一緒に管理するという考えが組織化され、1952年にECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)がつくられました。
一見ぱっとしない機関ですが(笑)、このECSCがEUの起源とされています。ECSCの創設が提唱されたのが1950年5月9日であったため、5月9日は、EUの創設記念日として祝福されています。
この石炭や鉄鉱石を共同管理しようとしたことが、EU設立につながる一つ目の理由でした。
理由② ソ連という大国に対抗するため、団結する必要があった
当時のヨーロッパ(点線で囲われた地域)の状況をまとめた図
二つ目は、政治的な理由です。
第二次世界大戦終了後、程なくして二大国アメリカとソ連による東西冷戦が始まりました。
当時の西ヨーロッパ諸国にとって特に脅威であったのが、共産主義を掲げるソ連でした。小国が多く分立していたヨーロッパは一つにまとまって、巨大なソ連に対抗する必要がありました。
そこでベネルクス三国(ベルギー、オランダ・ルクセンブルクの三国)・西ドイツ・フランス・イタリアが中心となって、先ほど述べたECSCやEURATOM(欧州原子力共同体)、EEC(欧州経済共同体)といった西ヨーロッパの統合を進める諸機関を作り上げました。
※図にもある通り、ベネルクス三国とドイツ、フランスの国旗が非常に似通っています。
ドイツっぽい縦じまカラーの国がベルギー、残りの国で下の色が濃い青色の国がオランダ、薄い青色がルクセンブルクです。ややこしいですね(笑)。
EUではどんなことができるの?
さて、EU内で出来ることは色々あり、最大のポイントは以下の3つです。
- 移動の自由
- モノ・サービス・資本の移動の自由
- 共通通貨ユーロの導入
少し抽象的な表現なので、下ではかみ砕いて簡単で分かりやすく説明しようと思います。
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① 移動の自由
「移動の自由」とは、その言葉の通り、EU内では国境関係なく自由に移動できること。
日本であれば、例えば隣国の中国に行こうと思ったら、パスポートを準備して入国審査を受けなければいけません。
(※厳密にはパスポートではなくビザです)
日中の国境を表した図
これが普通の国境のあり方です。
アメリカと日本の間でも、ベトナムと中国の間でも、ほとんどの国境では入国審査を行っています。
しかし、EUの中では入国審査がなく、国境を自由に移動することができます。
これが可能になったのは、「シェンゲン協定」というEU加盟国内の移動を自由に認める協定が発効しているからです。
1985年に、ドイツやフランスなど5カ国で締結されたのを皮切りに、「シェンゲン協定」はEU域内の多くの国で有効となっています。
因みに、離脱問題で揺れているイギリスは、シェンゲン協定には加盟していないのて、イギリスに入国する時は国境審査があります。
EU諸国間の国境のイメージ図です
では、国境の移動が自由になるメリットは何でしょうか?
ヨーロッパは、小さな国がたくさん集まってできています。国境が海で隔てられている日本とは違い、国境が陸で接しているので、隣町が違う国だということもよくあるわけです。
もしEUが無かったら、隣町のスーパーに行くだけでパスポートを見せて入国審査を受けなければいけません!
面倒ですよね。
シェンゲン協定のメリットは、国境を関係なく移動でき、隣町に遊びに行く感覚で他の国に行くことができる点です。
② モノ・サービス・資本の移動の自由
EU内では、モノ(商品)やサービス、資本(お金)の移動が自由です。
日本では、日本製品を外国に売るとき、外国政府に「関税」を支払わなければいけません。
例えば、日本製品を中国に売る(輸出する)としましょう。
せっかく安くて品質が良い製品を作ったのに、輸出するときに関税を払わなければいけないので、結局、中国で売るときには高くなってしまいます。
日本から中国に輸出する場合
しかし、EU内では関税がありません。
つまり、下の図のようになります。
EU間の貿易の場合
EU域内では、関税をとられないので、商品を安く売れることが分かります。
つまり、自分の国の得意な製品・商品を、他の国に安くで売ることができることを意味します。
ドイツは工業製品(機械)をつくるのが得意です。一方、フランスは農業が盛んなので、EU域内に小麦(パン)を安く大量に売ることができます。
お互いの国が自分の得意なモノを、安く売ることができるわけです
自分の国の得意なものだけを作っていればいいので、こちらの方が効率が良いと言えます。
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③ 共通通貨ユーロの導入
共通通貨の「ユーロ」は、2002年に導入されました。
これまではそれぞれの国が独自の通貨を使っていました。例えば、ドイツは「マルク」、フランスは「フラン」、オランダは「ギルダー」、ギリシャは「ドラクマ」のように。
しかし2002年を機に、EU加盟国のほとんどの国で同じ通貨として「ユーロ」導入し、各国で使われていた通貨を廃止することになりました。
つまり、、、
2002年以前 ドイツ:「マルク」、フランス:「フラン」、、、、、
⇩
2002年以降 ヨーロッパのあらゆる国:「ユーロ」
一方の東アジアだと、日本は「円」を、韓国は「ウォン」を、中国は「元」を使っていますが、国が違えば通貨も違う、これが世界のほとんどの国で普通なわけです。
ユーロの導入で何が変わったのでしょうか?
ドイツとフランスの例で考えてみましょう。
<ユーロ導入以前>
ドイツの通貨は「マルク」、フランスの通貨は「フラン」でした。
ドイツがフランスにものを売った場合どうなるでしょうか?
ユーロ導入前の貿易のイメージ図
フランスでは「フラン」が使われていて、ドイツでは「マルク」が使われているので、商品を売り買いするときに面倒なことが分かります。
上の写真の例のように、ドイツから機械を輸入した場合、フランスは自分の国の通貨である「フラン」で支払いたいですよね。
しかし、ドイツ国内では「マルク」しか使えないので、「フラン」での支払いは、ドイツ側に拒否される可能性もあります。
通貨がバラバラだと、貿易がスムーズに進まない可能性が高いです。
<ユーロ導入後>
ユーロ導入後の貿易のイメージ図
ドイツもフランスでも共通通貨のユーロを使っています。
フランスはドイツであろうが、どこの国であろうが、すべて「ユーロ」で支払えば問題ありません。
商品の代金を支払うときに両替をする必要がなく、貿易がスムーズになりましたね。
実物のユーロです
因みにですが、ユーロに書かれている建物は実際にはない空想上の建物です。
現実にある建築物を描いてしまうと、絵のテーマが一部の国に偏ってしまい、不公平だという意見が出る可能性があったので、想像上の建築物を描いているそうです。
【補足】ユーロのデメリット
ただし共通通貨ユーロの導入には、メリットだけでなくデメリットが伴います。
デメリットの一つは、加盟国が通貨発行権(=文字通り、通貨を自国で発行する権利のこと)を失ったこと。ユーロの通貨発行権は全てECB(=European Central Bank、欧州中央銀行)に一任されています。
日本銀行が日本円を発行できない状況を考えれば、その辛さが分かるのではないでしょうか?
財政が悪化しても通貨を増発することができず、財政破綻したのはユーロ加盟国のギリシャでした。
ギリシャはドラクマという通貨を以前は使用していましたが、ユーロ導入と同時に廃止しました。
ユーロの導入にはそれだけ代償があるということです。
【補足終わり】
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まとめ
さて、EUはどんな組織であるのかを、基本的なところから見てきました。
復習ですが、基本原則は
①移動の自由
②モノ・サービス・資本の移動の自由
③共通通貨ユーロの導入
でした。
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