【雪】東京の電車が雪にめっぽう弱い6つの理由を紹介します
線路にうっすら降り積もる雪(2016年11月25日、東京都八王子にて)
こんにちは。
キング・ブログ・スライムです。
【2019/02/08】追記
現在、東京など首都圏では、南岸低気圧が近づいていて雪の予報が出ています。
普段は雪が雨かで論争になりますが、今回はほぼ雪で間違いなさそうです。
都心でも5cmの降雪が予想されています。明日の遠出は控えるか、余裕を持って行動するか、家の近くで雪遊びするのが良いでしょう。
2016年11月25日に東京で積雪を観測しました。
11月の積雪は、明治8年(1875年)に観測を始めて以来、初めてだったそうです。
因みに明治8年というと、、、日本と帝政ロシアとの間で「千島樺太交換条約」が結ばれた年です。
世界史や日本史で学習するスケールですよね(笑)
さて現代に戻りましょう。
積雪は11月としては異例でしたが、積雪量は大したことはなく、私の家がある八王子では約5cm、東京都心では1cmほどでした。
都心はほんのうっすら積もったという程度で、昼頃にはすべて解けていました。
しかし、関東圏の公共交通機関はテンプレート通り遅れが発生していました。
と疑問に思った方もいるはず。
5cm程度の雪で公共交通機関がこぞって”てんてこ舞い”になる東京は、1メートル以上の積雪と闘う豪雪地帯に住む人には”バカ”にしか見えません。
確かに馬鹿みたいなのは事実なのですが(笑)、利用者がとんでもなく多いなど、東京の鉄道を擁護すべき点はあります。
ということで今回は、半ば東京を擁護気味に、東京の電車(公交通機関)がことごとく雪に弱い理由を書いていこうと思います。
先に理由をまとめておくと、、、
① 過密ダイヤのため、遅延が起きやすい
② 雪に慣れていない
③ 大雪対策に大量の資金を割くことができない
④ 国土交通省が間引き運転を指示している
⑤ 相互直通運転が増えた
⑥ メディアの発信地である大都市では、悪い情報は一瞬で拡散される
の6つが理由です。
スポンサーリンク
今回はこんな内容
理由① 過密ダイヤのため、遅延が起きやすい
山手線ラッシュは1分半で電車が来ることも(笑)
東京などの大都市の電車は、数分に1本という超過密ダイヤで運行している路線が多いです。
関東の鉄道は、私鉄やJR関係なく限界レベルに近い過密ダイヤです。
JR、京急、東急、小田急、東京メトロ、都営地下鉄、東武、西武、京王、京成、、、などどの鉄道会社にも当てはまりますよね。
このような超過密ダイヤで運行すると、雪が降っていない平常時でさえ、遅延が発生することがあります。
実際、ほぼ毎日遅延している路線もあります。※最寄りの中央線がそうです。
全力で運転して何とか間に合うようなダイヤ設定なので、少しでも遅れが発生してしまうと、簡単に遅れを取り戻せなくなります。
さて、遅延を引き起こす代表的なものには駆け込み乗車があります。
時には厳しい口調で車掌さんが「駆け込み乗車はおやめください」というのは、1分の遅れでも取り戻すのが難しいからなんですね。
他には、ホームに誤って転落したり、痴漢が発生したり、乗客の乗り降りが遅かったり、客同士が喧嘩したり、、、、
たった数分ですが、秒刻みで運行する東京の鉄道にとって、少しの遅れが致命傷です。
まして雪の日は、確実にトラブルが各地で多発するので、数分の遅れが重なって結局、30分や1時間といった大遅延が起きてしまうのです。
分かりやすく言えば、渋滞&積雪の高速道路を定刻通りに走るようなもの。
ただでさえ輸送量のキャパを超えているのに、雪が降って道路がスリップしやすくなったらどうでしょうか?
玉突き事故やスリップで通行止めになり、車が進まなくなるのは目に見えていますよね。
当然、所要時間内に目的地に着くことはできません。
理由② 雪に慣れていない
さすがに東京でこんな降ることはないですが(笑)
雪がめったに降らない東京の住人は、空から降ってくる白い氷の結晶に慣れていません。
それは私たち鉄道利用者だけでなく、鉄道会社の職員も同様です。
雪の日には、雪に応じた運転ノウハウが必要ですが、首都圏の鉄道の運転手は雪に慣れていないため、普段以上に時間がかかってしまいます。
例えて言うなら、普段はスプーンで食べているカレーを「今日はインド人のように手で食べろ」と言われたら、いつも以上に時間がかかるのと同じです。
スポンサーリンク
理由③ 大雪対策に割ける資金が少ない
3つ目は資金の問題です。
確かに、大雪で鉄道が遅れるのは問題です。しかし、首都圏にとって大雪の年であった2014年でさえ、大雪は2度しかありませんでした。
平年はワンシーズン一度ほどですから、正直なところを言えば、大雪のために莫大な対策資金を投資するメリットはほとんどありません。
鉄道会社は雪による影響を予想できていたとしても、予算の都合上、100%の対応が出来ません。
一方、東北や北陸、北海道など豪雪地帯の鉄道は、大雪ありきで運転されています。
融雪器をすべてのポイントに設置したり、除雪車で定期的に除雪をするなど、普段から雪対策を行っているのは周知の事実。
運行本数も1時間に数本と少なく、雪の影響で電車が遅れても、直ぐに取り戻すことができます。
下では、大雪の時に問題を起こしやすいトラブルメーカーを3人紹介しようと思います。
① 凍結故障するポイント
赤で囲った箇所がポイント
大雪の際に遅延の原因になりやすいのがポイントです。
雪の日には、「〇〇駅でのポイント故障により、現在運転を見合わせております」のような放送を耳にすることがありませんか?
上越新幹線のような雪国を走る鉄道でさえ、雪が詰まってポイント故障になる場合があります。
ポイントとは、電車の方向を切り分ける装置のこと。雪が詰まったり、雪が付着して凍ってしまうと、動かなくなってしまいます。
当然、ポイントが故障すると電車も動かせません。
下の赤で囲んだ部分が融雪器
ポイント故障を防ぐには、ヒーターやカンテラ(灯油を燃やす融雪器)を設置する必要がありますが、首都圏には4000個近くのポイントがあり、すべてに融雪器を設置するのはコスト的に難しいとされています。
そのため、大雪の際は融雪器を使っていないポイントが凍結で故障し、結果的に遅延につながります。
※冬場の気温が低く平時からポイントが凍結故障しやすい京王線など、融雪器を設置している鉄道会社も一部あります。
② 利かなくなるブレーキ
利用者との間で一番誤解が生じやすいところではないでしょうか?
全く鉄道に馴染みがない人は、「ブレーキが利かなくなる?意味わからん」だと思います。
実は、雪ってブレーキの天敵なんです。
雪でスリップするといえば自動車のイメージが強いですが、摩擦力(=ブレーキの利きやすさ)で言えば、電車の方が圧倒的に弱いです。
自動車はゴムとコンクリートですが、鉄道は鉄と鉄。どちらがツルツルして滑りやすいかは一目瞭然でしょう。
レール上に雪が積もるとスリップしやすくなり、なおさら車輪が滑りやすくなります。
そして雪で車輪がスリップしやすくなることに加えて、もっと危険な場合があります。
それは、雪が車輪とブレーキの間に入り込んで凍結してしまうこと。雪がブレーキの摩擦力を奪ってしまい、ブレーキが全く効かなくなってしまいます。
「黒色の円盤」がブレーキ
「そんな馬鹿なことがあるか~」と思うかもしれませんが、これが原因で何度か事故が起きています。
後で触れますが、私がすぐに思い出せるだけでも、2014年の東急東横線の元住吉駅での電車追突事故や、2002年に起きた名鉄の新羽島駅でのオーバーラン事故などの重大事故が起きています。
③ 断線してしまう架線
これも一見、意味不明ですよね(笑)
架線は電気を送る電線のことです。そして架線から電気を受け取る機器がパンタグラフ。(下の写真の通り)
雪がパンタグラフに付着すると、その重みでパンタグラフが下がって架線から離れてしまいます。そして、架線とパンタグラフにできた隙間で火花が発生し、電線が溶けて断線してしまうのです。
特に首都圏では、北陸や東北、北海道などの豪雪地帯と比べて気温が高く、湿った重い雪が降りやすいため、架線断線を引き起こしやすいと言われています。
「では、パンタグラフの反発力を強くしたらいいのでは?」と考えたくなりますが、そうすると次は、パンタグラフと架線の摩擦力が強くなりすぎて、架線を損傷する可能性が出てきてしまいます。
パンタグラフと架線は、微妙な力関係で成り立っているのです。
最近は、首都圏の鉄道会社も対策をしていて、パンタグラフを「ひし形」のものから、「くの字型(シングルアーム式)」のものに取り替えるところが増えています。(下の写真)
見て分かる通り、「くの字型」のパンタグラフは雪と触れる面積が狭くなるので、着雪しにくくなりますね。
スポンサーリンク
理由④ 国土交通省が間引き運転を指示している
「間引き運転」が直接的に遅延につながるわけではないですが、「間引き運転」を実施することで混雑が激しくなり、結果的に電車が大幅に遅延します。
この訳の分からん国交省の指示が出されるようになった原因は、下の写真の事故です。
2014年に関東地方を襲った大雪の際、東急東横線の東住吉元住吉駅で電車の追突事故がありました。
満員電車のラッシュアワーに起きていたら大惨事になっていたでしょうが、この事故が起きたのは深夜で、電車やホームにいる人は少なく、幸い大惨事にはなりませんでした。
(引用元サイト:東急東横線で追突、後続電車が脱線 元住吉駅―日本経済新聞)
そして、事故が起こった原因は以下の通りです。
原因を調査していた運輸安全委員会は28日、ブレーキの力を車輪に伝えるブレーキパッドに付着した油やチリが雪と混じって、ブレーキが利かなくなったとする報告書を公表した。
(引用元サイト:東横線 元住吉駅追突事故 原因はブレーキパッドの付着物)
事故原因は、雪がブレーキに付着したことでブレーキが利きにくくなっていたこと、ブレーキが掃除されていなかったことの2点でした。
この事故を重く見た国交省は、大雪の時には混乱を避けるために、運転本数を平常より少なくする「間引き運転」を関東の鉄道会社に指示しました。
2016年1月18日に発生した大雪の時には、そのような衝突事故を避けるため、関東の鉄道各社は「間引き運転」を実施しました。
しかし皮肉なことに、これが仇となってさらなる混雑を招くこととなり、大規模な遅延が起きてしまいました。
京王線や東急東横線、東急田園都市線、中央線など、一部の鉄道会社では駅に人が押し寄せて危険な状態になったため、駅内への入場規制が行われたと聞いています。
電車が動かせないほどの大雪ではなかったのに、これほどの大混乱が起きたのは、国交省の「間引き運転」だったといわれています。
平常時でさえ輸送能力の限界に近いのに、間引き運転のせいで普段の7割程度の本数しかなければ、大混雑が起きるのは分かり切ったことです。
ということで国交省の「間引き運転」も、首都圏の電車が遅れる要因だといえます。
理由⑤ 相互直通運転が増えた
副都心線と直通運転を行う東急東横線
最近はほとんどの路線がやっているので、当たり前になってきた相互直通運転(相互乗り入れ)。
相互直通運転とは、複数の鉄道会社の路線を1本の電車で直通運転させる試みです。利用者としては乗り換える必要がないので便利ですよね。
JRと私鉄が犬猿の仲である大阪では私鉄同士の直通運転がメジャーですが、東京では私鉄・JR・地下鉄は関係なく、ほとんどの路線で直通運転が行われています。
余談ですが、大阪出身の私は東京に来て初めての頃、驚いた覚えがあります。
さて、利便性の向上といったメリットはありますが、その一方、ダイヤ乱れが発生しやすくなります。
一つの路線で遅延が発生した場合、直通運転するはずだった電車がダイヤ通りに運行されず、他の路線にも遅れを及ぼしてしまいます。
特に雪が降った場合は、ほぼ100%の確率で電車が遅れるので、その遅延が直通先の鉄道会社にも遅延を引き起こし、全体的な遅延が拡大してしまいます。
インフルエンザみたいなイメージでしょうか?(笑)
最近は遅延対策として、ダイヤが乱れるとすぐに直通運転を停止させる鉄道会社が多いです。
直通運転をやめると、遅延を自社内で食いとどめることができるためです。
理由⑥ メディアの発信地は、悪い情報を一気に拡散してしまう
メディアの代表格・テレビ局の報道陣
大阪や東京、名古屋といった大都市は、発信力のあるメディアが多く、テレビやネット、SNSなどで大雪の情報が一気に拡散されます。
特に東京は巨大マスコミの中心地で、日本で最強と言える情報発信力を持っています。
もし地方の鉄道が雪で運休になっても、新聞の地方欄の最後に少し書かれるぐらいでしょう。
一方、東京の路線が雪で大遅延をすると、全国版のニュースで伝えられる可能性が高いです。
例えば以下のニュース。
『震えながら駅で4、5時間待たされる! 京王線この異常事態に対策はないのか―Jcast ニュース』
⇒東京の一路線でしかない「京王線」ですが、2016年1月18日の大雪では、架線が切れるなどの不運もあって、午前中はほぼ運休状態でした。
この大規模な遅延が発生したニュースは、当日の報道ステーションでも報じられていました。
地方の出来事なら、全国版に掲載されることなどあり得ないでしょう。
メディアが東京に偏向した報道を続けた結果、「東京は雪に弱い」ことが実際以上に強調されたと思います。
確かに雪には弱いですが、それは他の太平洋側の地域と同じであり、特段に弱いわけではありません。
数多くメディアを有し、強力な情報発信力を持つ東京ですが、それがあだとなって自身に不都合な情報も拡散されてしまうといえます。
スポンサーリンク
まとめ
東京や大阪などの大都市の鉄道が雪に弱いことは確かです。
豪雪地帯で雪を掻き分けで走っている電車を見ると、どうして東京の電車は雪に弱いのかと腹が立ってしまいますが、それには相応の理由があるのでした。
東京では雪の日には、ほぼ100%の確率で電車が遅れます。
明日は雪だという天気予報が出ていた場合は、普段より1時間早く出るなどの対策をとりましょう。
_
関連記事もどうぞ
>その際に東急東横線の東住吉駅で電車の追突事故がありました。
東住吉じゃなく、元住吉ね。プロフで「良いやん」といっていたからあなた関西の人かい?